労務管理ヴィッセンシャフト

舐めてはいけない!職場のハラスメント対策は重要なリスクマネジメント

2022年9月14日

労務管理ヴィッセンシャフト vol.3


1.ハラスメント対策は必須
職場におけるハラスメントの事件が、昨今世間を賑わせております。職場のハラスメントの代表格は、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」です。パワハラは、職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、身体的または精神的な攻撃を加えることで就業環境を悪化させる行為をいいます。セクハラは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受け、就業環境が害される行為を指します。よく言われるのですが、自社の社員だけでなく、派遣先における派遣労働者への行為や、顧客及び取引先の従業員に対する行為もセクハラとなりますので、注意が必要です。以前、某大臣が「政党内同士の行為じゃないから(相手は女性記者でした)セクハラにはならない。」とコメントした人がいましたが、まさにこういういう認識こそ誤りです。 また、マタハラとは別名「妊娠・出産に関するハラスメント」ともいいます。職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産・育児休業など各種制度利用に関する)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申請・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいいます。また妊娠出産だけじゃなく、介護休業の取得などに対する不適切な言動も対象となります。

最近の新聞ニュースをみても、驚くような職場のハラスメント事件が報道されております。先日も、埼玉県警の警部補が、部下の妻が作った弁当を「ゴミみたい」といい、また容姿を揶揄する言動がパワハラにあたるということで、懲戒処分とされたニュースが報道されておりました。

私は仕事柄、顧問先でパワハラ防止セミナー講師をすることが多いのですが、ことにご高齢の方から「昔はこんなことは問題にならなかった・・・」「ある程度厳しくしないと教育にならない」「なんでもハラスメントになる昨今の傾向に疑問を感じる」というご意見をいただくことがあります。しかし時代と共に常識や基準は変わります。会社経営の在り方だって、昔と今とではパラダイムが変わったのと同じことです。企業は今やハラスメント対策を行わないと、風評被害により株価下落やブランドイメージ低下、SNS炎上などにより深刻な経営ダメージに繋がります。

2.職場のパワハラ対策で良質な環境づくりを
数あるハラスメントの中でもっとも会社内で見られる事例がパワハラです。そもそもパワハラとは、どういう行為を指すのでしょうか?厚労省はパワハラ6類型という指針を出しております。①身体的な攻撃②精神的な攻撃③人間関係からの切り離し④課題な要求⑤過少な要求⑥個の侵害です。①の身体的な攻撃は、殴るけるなどの暴行を指します。②は脅迫や名誉棄損、侮辱や暴言などです。バカとか死ねといった言動がそれにあたります。③人間関係からの切り離しは、いわゆる仲間外れです。④は業務上明らかに遂行不能なことを要求する行為です。例えば今週中に100件契約を取れ、など無理難題を持ちかける行為です。⑤は逆に程度の低い仕事を命じる、あるいは仕事を全く与えないといった行為を指します。昔、「追い出し部屋」というのが問題になりましたが、リストラの一環として個室でシュレッダーをかけさせるなどの行為です(会社に必要とされていないと認識させ、辞職に追い込む)。この6類型に限らず、職場内での優位性を背景とする嫌がらせであればパワハラになることもあります。

「職場内の優位性」は一般的には上司から部下へ行われることが多いですが、同僚から同僚または部下から上司というケースも稀にあります。例えば他の部署から異動してきた新任の課長に対し、仕事の情報を持っている部下が嫌がらせする・・・なんてこともあります。

2020年に改正労働施策総合推進法が施行され、パワハラ対策が法制化されました。あまり知られていませんが、今年の4月からは中小企業も義務化されております。具体的に何をすべきなのかと申しますと、パワハラ防止の方針明確化と周知、就業規則等への規程追加、相談窓口の設置等を行う必要があります。具体的な対策については、次回以降のメルマガで述べてゆきたいと思います。

著者プロフィール

野崎律博

主任研究員

公的資格など
特定社会保険労務士
運行管理者試験(貨物)


物流事業に強い社会保険労務士です。労務管理、就業規則、賃金規定等各種規定の制定、助成金活用、職場のハラスメント対策、その他労務コンサルタントが専門です。労務のお悩み相談窓口としてご活用下さい。健保組合20年経験を生かした社会保険の活用アドバイスや健保組合加入手続きも行っております。社会保険料等にお悩みの場合もご相談下さい。

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