物流業には、物流業の経営がある
2021年4月7日
物流なんでも相談所 Vol.26
コロナウィルスによる感染拡大で、国内物流量が大幅に減少し続ける中、物流業は需要減少に伴う荷主から物流コスト低下の圧力がかかる中での厳しい経営を強いられています。物流は国内経済と生活を支えるライフラインでありながらも、その役割とはかけ離れた厳しい環境の中での戦いを乗り切らねばならないのです。国内経済低迷が続く中、経営環境が厳しいのは物流業に限られたことではないかもしれません。
そのような厳しい環境の中で物流業の経営者として今何を心がけておく必要があるのでしょうか?物流業に限らず企業経営において、ビジョンを設定するということは、経営者の役割としてとても重要なものです。『断絶の時代』等の著作で有名なドラッカーは、自由経済における経営と経営者のあり方について、「自由競争の経済にあっては、企業が競争に勝って成功をおさめるか、あるいは企業が存続するかどうかを決定するのは、経営者の能力と実行力である」と述べています。時代背景や企業形態も影響するでしょうが、とにかく経営者である以上は常に次の2つの問いに即答できなければなりません。①自社の事業の現況、そして②自社の事業の将来像、これを常に社員に対して伝え、必要に応じ啓蒙しているかが、とても大切です。
そのためには、いつでもコミュニケーションを取れる環境を幹部社員の協力も得ながら整えておく必要があるでしょう。また、ドラッカーは、「事業のただ1つの明らかな目的は顧客の創造である」とも言っています。顧客の創造、つまり顧客の獲得です。日本のマーケットは、ほとんどの分野で成熟しています。とりわけ物流業は供給過剰と言われて久しく、このまま安閑として顧客を待っていたのでは、企業の存続が危うくなるであろうことは皆様よく御存知の通りです。では物流業においては、どの様に顧客を創造すればよいのでしょうか。ポイントは、やはりセオリー通りの“マーケティング”が第一です。物流業における最も有効なマーケットは荷主市場ですから、できる限りその生の声を聞き、必要としているサービスや商品をリサーチすることに成功すれば、もうそこに“顧客”の姿が見えて参ります。
かつての物流業は、受注産業の代表選手でした。しかし自由化が進み、縦割りの壁も外され、今経営環境は劇的に変化してしまいました。ここで誰よりも抜きん出るためには、革新が必要です。価格において、商品内容において、営業の方法において、この革新は同時に進められてこそ有効です。無駄な業務が行なわれていないか、とか経営組織や管理方法においても無駄の排除を始めとした革新が必要です。
市場を拡大することで得た利益、企業の革新によって生み出された利益。いずれも企業を維持存続させる上で大切な財産です。先のドラッカーの言葉を借りれば、これらの利益は、①企業が維持存続するための諸経費、②企業の発展と拡大に必要な将来費用、③顧客の創造に必要な経費等をカバーするための必要最小限の利益、という概念のもと有効に使われてこそ、その目的を果たすことになるのです。
コロナ収束がまだ見えない中で、厳しい時代は続きますが、経営者・幹部の皆様におかれましてはどうか冒頭の問いかけをお忘れになることなく、我が心を信じ、お進みいただきたいと願います。