日立物流<決算会見> 中谷社長「コロナ影響は半減、欧米も回復」
Daily Cargo 2020年10月30日掲載
日立物流は28日、オンラインで2020年4~9月期連結決算説明会を開催した。中谷康夫代表執行役社長ら幹部が事業概況や今後の計画を説明した。同期は新型コロナウイルス感染拡大の影響額がグループ全体で売上高で76億円、営業利益で15億円だった。中谷社長は「新型コロナ影響額は第1四半期から半減した。海外事業では北米、欧州も回復傾向にある」とした。中国事業も引き続き堅調で、海外事業は減収増益だった。
20年4~6月期連結決算は本紙29日付既報のとおり、売上高が前年同期比10.1%減の3064億円、営業利益(調整後)が6.8%減の153億円、EBITが21.7%増の238億円、親会社株主に帰属する当期利益が21.0%増の131億円だった。新規受注や「協創」により約39億円の増益要因があったもののの、新型コロナ影響による物量減が約50億円の減益要因となり減収減益だった。
海外事業の売上高は17%減の822億円、営業利益は7%増の38億4000万円。国・地域別では、欧州は売上高14%減の282億円、営業利益17%減の18億1000万円。中国は売上高20%減の191億円、営業利益4.8倍の10億9000万円。北米は売上高20%減の177億円、営業利益は57%減の3億6000万円だった。中国を除くアジアは、売上高19%減の164億円、営業利益6%減の6億4000万円。北米は第1四半期で稼働停止していた自動車工場が徐々に再開して物量が回復。欧州は都市封鎖などの規制が緩和され、トルコの連結子会社で同国と欧州間のインターモーダル事業を推進するMars Logisticsの取り扱いが堅調に推移した。中国を除くアジアはフォワーディング事業は厳しいものの、3PL事業などが好調だった。中国は経済活動の再開に伴う航空輸送需要増による特需があった。
同期の新型コロナ感染拡大の影響額は、グループ全体で売上高で76億円、営業利益で15億円。第1四半期からの累計では売上高で231億円、営業利益で49億円だった。
21年3月期通期連結業績予想については、売上高は前期比3.2%減の6510億円、営業利益は5.9%減の315億円、EBITは2.7%減の385億円、親会社株主に帰属する当期純利益は0.5%減の215億円でそれぞれ変更なし。
そのうち、日立物流は売上高1%減の5831億円、営業利益は前年並みの309億円を見込む。日本国内では、第1四半期に「巣ごもり需要」で増加した日用品やメディカル、eコマース(EC)などの生活関連の取り扱いが平準化傾向にある。海外もおおむね全地域で物量が回復傾向という。
バンテックは売上高20%減の761億円、営業利益61%減の15億円を見込む。営業利益が黒字化し、収益性も緩やかに回復している。また現在、同社は「輸送コアカンパニー」としての輸送ネットワークを強化している。今年10月からは「集中配車センター」と出張所を各地に設置して、求貨・求車システムネットワークを構築して中長距離輸送の運用や管理を一元化する「集中配車センター構想」を開始した。システム連携で管理面を統一し、グループ輸送部門と協創パートナーとのリソースを連携する。同社をコアとして日立物流グループと輸送協力会社のフリートリソースを最大限に活用し、高品質で持続可能な輸送サービスを提供する。
◆海外でスマートウエアハウス検討
今後の事業戦略については、昨年度からスタートした中期経営計画「LOGISTEED 2021」の進捗状況を説明した。同社は「プラットフォーム(PF)群の事業化」として取り組んでいる倉庫PFの「スマートウエアハウス」、輸送PFの「SSCVファミリー」、デジタル事業基盤「SCDOS」の構築を進めている。
輸送PFは、10月からスマート安全運行管理の輸送デジタルプラットフォーム「SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)」で、見積もり・受発注や配車、運行、請求の管理をデジタル化するソリューション「SSCV-Smart」を提供開始した。倉庫PFは、省人化テクノロジーの実装を加速に向けて、来年2月に稼働予定の東日本第2メディカル物流センター(埼玉県)でデパレタイザー、パレタイザー、無人搬送車(AGV)、無人フォークリフトなどをワンフロアで活用していく。デジタル事業基盤構築では、顧客のサプライチェーンをデジタル化して「可視化」「シミュレーション」「最適化」を実現。課題を短期間で解決するほか、物流DX投資の最小化に貢献していく。
そのほか、海外輸送ネットワークの構築にも取り組む。Mars Logisticsのフランス子会社を設立し、今年度中にも営業を開始する。同社では、トルコ・欧州間のインターモーダルとスペイン・フランスの輸送やクロスドック機能を組み合わせて、欧州域内をカバーする輸送ネットワークを実現する。
中谷社長は「現行の中計は折り返しの時期に来た。ゴールに向けてはデジタルトランスフォーメーション分野、海外事業への戦略投資を継続する。自己株式やキャッシュを機動的に活用する」と話した。海外事業については「フォワーディングを含めて一段の強化を図りたい」とした。特にPFの取り組みの中では「スマートウエアハウスを最初に展開したい。日本と同様のコンセプトの下、中国またはアジアで進める。地元の会社ともタイアップしていきたい」とした。
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