― 新型コロナ発生で御社としてとった措置は。
(富永社長)まず、感染予防では各拠点でマスク着用、消毒液を設置して手洗い、体温測定などを義務化したほか、事務室のソーシャルディスタンス化で別途会議室を事務所化したり、室内をビニールのれんで仕切るなどした。在宅勤務については、事務の一部をテレワーク化したが、現場の作業員や配車係などは無理なので、通勤はできる限り自家用車利用にした。会議については、従来からオンラインミーティングを実施してきたが、この規模を拡大した。移動に伴うマイナスを考慮すると効果が大きく、今後もオンラインでできるものは拡大していきたい。
補助金については、雇用調整助成金は食品運送の性格上、休業せず使わなかった。政府が新型コロナ対策で制度を充実させ、2割休業で助成金が受給できるようになったが、当社としては、無理をして休業をするよりも仕事量が減った分は、残業をコントロールすることにより、痛みを全員で分かち合うという道を選んだ。
― 昨年まで人手不足が恒常化していたが、新型コロナ発生後は人手事情に変化はあったか。
(富永社長)半年前までは確かに人手不足が激しい状況だったが、新型コロナ発生後は乗務員、作業員の求人は多少緩んでいる。ただ、これはあくまで一時的なものとみていて、新卒以外は必要ないなら今は採らない。新卒は毎年20人ほど採用しており、今年度も採るつもりで、面談など採用活動を続けている。これまでのところ順調に推移している。
― 働き方改革や人材教育・研修の取り組みはどのように進めているのか。
(富永社長)働き方改革は貨物量の時期的な増減に大きな差があるだけに取り組みが難しかったが、4月から実施する計画を立てたところ、新型コロナによる貨物の減少でスムーズに取り組むことができた。この点では逆にプラスに作用したので、これからも持続させていきたい。人材育成への影響については、既存の社員研修は従来から力を入れてきたが、エリアや部署を越えて人が集まれなくなり今年度は中断。8月に初めて実施できたが、この点ではマイナスだ。新入社員研修については、従来から4月に入社していきなりゴールデンウィークの繁忙期に突入し中断を余儀なくされてきたが、今年は貨物減少で期間中も実施でき、この点はプラスだった。
― しばらくはウィズコロナ時代が続きそうだが、今後の経営の考え方や方針についてお聞きしたい。
(富永社長)乗務員や作業員など物流人材の不足、冷凍倉庫の不足など大きなトレンドはウィズコロナ下でも変わらないと考えており、会社の計画もこれまで通り実施していく。研修の他に施設にも積極的に投資していく方針で、施設については鹿児島、大阪茨木などの計画を当初予定よりも前倒しして推進していく。
(聞き手:葉山明彦)