物流なんでも相談所

BCP対策の見直しを

2020年8月5日

物流なんでも相談所 Vol.9

 

コロナウィルス感染拡大に始まり、全国規模での水害など今年も日本は災害に見舞われています。このような中でも逆境をばねとして成長続ける物流企業も存在しています。その鍵はラストワンマイルにあると言われています。加えてホワイト物流推進や働き方改革における、労働時間の短縮など、物流業界に取っても厳しい経営環境の中でも、宅配業界は確実に取扱量を増やしています。貨物の増加によって派生した必要人材の確保が難しい状況となっている課題は解決の糸口さえ見いだせていませんし国内全体の物流量は減少傾向にありますが、BtoCに関しては今後も益々需要が増えてくると思われます。人口減少に伴うリアル店舗の減少や高齢化による買い物難民など環境が激変する中、その課題を補うネットスーパー等宅配事業の必要性は益々高まってくるものと考えられているからです。特にスマートフォンの普及でネット通販は拡大の一歩であり、こうした社会インフラの不足を補うサービスとして、ラストワンマイル事業(輸配送の最終配達サービス)が重要性を帯びてきており、通販最大手のアマゾンに代表されるように、配送料無料化が消費者の利便性に拍車をかけていることが要因です。

重量物(水や酒など重たいもの)や定期的に使用するものなどはネットを通じて注文をする事で、自分で買いに行かなくても補充できるインフラが出来上がってきました。今後BtoCやBtoBにおいても、働き方改革における生産性を上げてサービスを維持する為にはラストワンマイルサービスのあるべき姿を明確にする時期に来ているように思われます。

九州や西日本、に加えて岐阜県等を襲った 線状降水帯による豪雨は、九州南部、九州北部などで河川の氾濫などによって多くの人命を奪い、高速道路や鉄道などの交通網を大きく寸断し、浸水や物流の停滞で操業を見合わせる工場や、休業する小売店が相次いでいます。特に熊本県南部での球磨川の氾濫によって多くの人命が失われました。日本高速道路(NEXCO)によると、九州自動車道、中国自動車道は9日朝に全線で通行可能になりました。1年分の雨量を1日の数時間で記録するなど、土砂崩れや河川氾濫によってこれまでにない大きな被害をもたらしています。コロナウィルス被害に加えて、異常降雨よる被害が続く中、 物流業として産業と人の命を守るライフラインの使命を今一度考え直す必要があると言えるのではないでしょうか?

記録的な大雨による被害は各地に及びました。球磨川や川辺川が氾濫し50人以上の死者を出した熊本県を始め、全国11県に大きな爪痕を残している「令和2年7月豪雨災害」は、改めて我々に自然災害の脅威を見せつけました。7月10日時点でも予断を許さない状況が続きましたが、ここ数年間、「何十年に一度」レベルの災害が夏のシーズンを狙い撃ちするかのように集中的に起きています。今年は、梅雨前線が長く停滞していることで“線状降水帯”が、毎日、発生。だから、ここまでの大雨になっているといえます。 “線状降水帯”によって記録的な大雨が降る場合は、南の海上に台風や熱帯低気圧がありますが、南の海上を見てみると、それがありません。台風が湿った空気の供給源ですが、その元がないのに、大雨になっていることは異常だといえます。この原因は、日本付近の海上を見ただけではわかりません。南アジアを見るとわかります。“太平洋高気圧の強さ”と“インド洋の海水温”が大きな理由と考えられます。また、インド洋の海水温が高く、そこから、暖かい湿った空気が太平洋高気圧の縁を通って、日本列島まで運ばれてきていて、その入り口が九州です。だから九州で、これだけの大雨が降り続いているというのが、今年の大きな特徴だといえます。もう1つは『地球温暖化』。地球の気温は上がってきていて、同時に海水温も上がる。海からよりたくさんの水蒸気が供給されます。同じ気圧配置であったとしても、より雨が多くなります。それらが重なり合って、今年のような異常な雨の降り方になっているのではないかと思います。今後、大雨は、1週間くらい続きそうです。

物流業としては、自社の事業継続はいうまでもなく、社会インフラを担う社会的責任、また 有事の際には支援物資等の供給体制の一翼を担う民間事業者としての社会的貢献も求められています。企業規模を問わず、事業継続のための備えである事業継続計画の策定は当然お義務となりつつあります。企業トップのリーダーシップのもと、BCPが策定されなければならない理由はそこに企業経営方針に基づく意思決定が必要であるからに他なりません。物流業の場合、①自社の営業をいかに早期に開始し、できるだけ短期間で通常通りに戻すか。事業をいか に存続させるか。 ②緊急物資輸送など社会から求められる物流機能をいかに担うことができるか。③顧客のサプライチェーン(物流システム)をいかに確保し、早期に復旧するか。この3つの視点から早期に事業を行うことができる体制を、予め準備しておくことが重要と考えられます。BCPとはまさに、こういった緊急事態への備えを指すものでしょう。

BCPは一度策定したからよいのではなく、時代の流れや環境に合わせて見直すことが必要です。必要のなかったインターネットウィルスに対するセキュリティなど大きな問題となりつつあります。経営環境にふさわしいBCPの策定を進めていただきたいと思います。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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