物流なんでも相談所

WITH コロナ時代を生き抜く

2020年6月24日

物流なんでも相談所 Vol.6

 

花も桜から、つつじ、そして紫陽花と移り変わっています。季節は例年通り動いているのに、元に戻らない生活環境にストレスを抱える方々も多く診られるようです。自粛規制緩和されると、東京のホストクラブでのコロナ感染者が20名を超えるなど自粛期間にはなかった広がりを見せています。6月19日に県をまたぐ移動の緩和が発表されると、人々の動きが戻り、物流量への増加も期待したいところです。今年はどうしもこのコロナを頭から切り離して考えることが難しいようです。withコロナの新しい生き方を身に付け、コロナ感染を防ぎながら経済活動を進めていくことが今の日本には必要となっているのでしょう。学校も始まり、プロ野球などスポーツも無観客で始まるなど少しずつ平常を取り戻しつつあるように思えますが、コロナが終息できたわけではありません。注意を怠ることなく、歩んで参りたいと思います。

コロナ時代の物流をどう生き抜けがいいのか、CBREの調査では新型コロナウイルスの感染拡大が発生。CBREはサプライチェーンの見直しによる拠点分散や在庫の積み増しなどで、物流施設の需要は中長期的に増加するとみています。アンケートでは、新型コロナウイルスの影響があると思われる項目について、「在庫量の積み増し」が30%で最も多く、「特に変化はない」を除き「庫内作業の自動化が加速する」が17%と続いています。倉庫の新設・移転などの計画に関する質問では、何らかの計画があると回答した企業のうち、「面積を増やす」が67%、「拠点数を増やす」が52%を占めました。コロナの影響で適切な在庫を保有する形に今後のサプライチェーンも変わってくることが期待されています。

コロナと生き抜く時代に物流はどのように変化していくか考えてみましょう。コロナウィルス感染拡大の影響を受けたメーカ、次に大きな影響を受けたのが、休業を余儀なくされた小売・飲食業界です。当然ながら物流業でも店舗への物流がストップするなどの影響が出ています。その代わりに伸びているのがEC・宅配事業です。家庭での引きごもりやテレワークによる在宅率の向上もプラスに寄与して、不在時の再配達率も大幅に減少するというメリットも出てきています。通販事業は大幅に売上を伸ばしました。今後も直接店舗に行くことなく購入できるネットショッピングや通販は拡大を続けると見込まれています。オンライン医療の開始に伴い、非対面で受け取れる処方薬の宅配もこれを機に一気に加速すると予想されています。アマゾンもUSでは10万人を追加雇用するなど、失業者の雇用の受け皿にもなっていることも事実です。店舗で働いていた人々の中には、UBER Eatsのアルバイトに転じた人も少なくありませんでした。物流の仕組みもラストワンマイルを中心とする見方に変わってくるかもしれません。企業物流に特化してきた物流企業も荷主依存から業容拡大、サービス領域の拡大が必要となってくるでしょう。強みは弱みに変わってくる可能性もあるのです。

コロナ終息後はモノに付着するウィルスを除菌・完全消毒することが新たな付加価値となってくるでしょう。安心と安全を求めるニーズは高まり、ウィルスが増殖しにくい環境、クリーンルームのような空調換気システム等による保管・輸送モードが必要とされてくるでしょう。また、物流に携わっている倉庫のワーカーやドライバーが、ウィルスに感染していないか・ウィルス抗体を持っているかの認証が重要な顧客価値となり、安全・安心の品質基準が変わる、抗体検査を全社員に済ませておくことも必要です。

庫内でのサービスも人員不足を補う意味で発展が見込まれてきたAIやロボットのニーズが高まるでしょう。人が介在しないことが、感染リスクを抑える上での安心感を与えることになるからです。無人倉庫が一層進展し、輸送も自動運転やロボットによるモノの受け渡しが浸透するでしょう。大手ヤマト運輸が置き配を始めたことで、がスタンダートとなり、むしろ非対面の受け渡しの方が好まれるようになるかもしれません。多くの人が触るような紙の受け渡しが敬遠されるようになり、送り状のデジタル化、船荷証券のデジタル化、ブロックチェーン等の技術を使い複数の業者が安全にアクセスできる基盤が整備されることも期待されています。紙中心のオペレーションのデジタル化が一層進むことになるでしょう。これまでの人為集約産業から転換が進む可能性もあると思われます。しかしながらどんなに便利になり、IT化が進んでも、物流における人材の重要さは変わることはないだろう思います。

最後にライフラインを支えるために、危険な状態でも、物を運び届けている物流業のことを忘れて欲しくはありません。物流マンには自負とプライドを持ってこの業務に当たっていただきたいと願います。コロナ撲滅に向けて皆で頑張って参りましょう。

著者プロフィール

岩﨑 仁志

代表主席研究員

職歴
 外資系マーケティング企画・コンサルティングセールス


物流・運輸業界に留まらず、製造業や流通業物流部門などを対象にコンサルティングを行ってきました。国内外の物流改善や次世代経営者を育成する一方で、現場教育にも力を発揮し、マーケティング、3PL分野での教育では第一人者とのお声をいただいています。ドライバー教育、幹部育成の他、物流企業経営強化支援として、人事・労務制度改定に携わった経験から、物流経営全般についてのご相談が可能です。

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