徒然日記

「畳」についての“一考察”

2020年2月19日

『徒然日記』 

 

1年前に、「職人技」を取り上げ、そのなかで「畳屋さん」のことを書きました。いわゆる「和室」が少なくなり、畳屋さんの「職人技」も見られなくなったという「年寄りの溜息」でした。

そのような思いの中で、我が家は「畳表」を、11年目で張り替えました。みなさんのお住まいが、いかがなのかはわかりませんが、私の過してきた人生から思うに、「タタミ」は、「かたみ」が狭い存在になってきたように思います。

その昔の我が家含めて、ほとんどのご家庭が、「畳敷き」の和風住宅でした。たまに、今で言う“フローリング”床のお宅にお邪魔したときなどは、「なんと洒落たおうち(洋風)なんだ!」と、うらやましく思ったものでした。その床の上に、ピアノが置いてあったりすると、生活グレードと文化の差を感じてしまいました。

前述したように現在では、我が家を含めて、和室(畳敷き)の部屋が少なくなっています。そこで、「畳に光を当ててみよう」の思いで、久々に意識した「タタミ」について、畳屋さんが置いていった「畳ガイドブック」で知り得た知識を『受け売り』で書かせていただきます。

「畳表」は『イ草』で作ります。【(準和名は(藺。「イグサ」を使うこともある)。別名:トウシンソウ(燈芯草)】だそうです。そういえば、東京都杉並区に「井草」という町名がありますが、今回は横目で通り過ぎます。

この「イ草」ですが、湿地に“自生”する多年生植物で、現在は熊本・福岡・広島・岡山・石川・高知等で栽培されています。ちなみに、今回の我が家の畳表は熊本県産の「肥後表」(広島県産の「備後表」も有名)。熊本県は、全国のイ草の8割以上、畳表の7割以上を生産、圧倒的なシェアを誇っており、耐久性に優れ種類が豊富であるそうです。

「自生しているんだから“タダ”みたいなののじゃないか」と思っていましたが、1枚の畳表を織るのには、4,000本~7,000本のイ草が使われ、さらに、「織られている経糸に麻糸を使っている(であれば高級だとか)」そうです。さらに、「そして近年、特に注目されているのが有機肥料による減農薬栽培の畳表です。高品質で価値が高く注目されています」と追い打ちをかけられてしまいましたので、畳屋さんの策略(パンフレット)に洗脳されて、“言い値”をすんなりと支払ってしまいました!?

<自生>と書きましたが、このガイドブックによると、大変な努力をして、良質な「イ草」を育てているそうです。曰く【8月に苗床から健康な苗だけを1株1株丁寧に株分けをし、12月の寒いときに本田(ほんでん)に植え付けられる。翌年5月上旬頃、イ草の先端を刈り取り、根元に日光が透けるようにして、新芽の発生を促す.そして、良質のイ草を生育させるため、5月から6月にかけ肥料(これが“有機質肥料”)を施す.6月中旬~7月中旬にかけ、よく充実したイ草を機械で刈り取る。熊本畳表の独特な光沢と香りを持たせるため、天然鮮度による泥染めを行い、機械で織り上げられる】と言うことだそうです。・・・とこれだけ「ヨイショ」しましたから、「くまモン」から、表彰状を頂戴しても良いと思っています。

で、今回の表題とは直接は関係が無いのですが、池井戸潤の小説に「下町ロケット(ヤタガラス)」があります。昨年から今年正月にかけてテレビドラマ化されましたから、ご覧になった方も大勢いらっしゃると思います。無人農業ロボット用の「エンジンとトランスミッション」の開発に命をかける、主役の佃製作所の佃航平社長が、最後に、「この開発は自分のためだけではなく、日本農業の豊かな将来のためにある」と言う言葉が、印象に残っています。台風襲来の中、収穫間近な稲を救おうと、佃製作所が心血を注いだ“無人コンバイン”が刈り取りを始める。大雨の中で、その作業を見つめる、佃社長はじめとする佃製作所幹部社員一同。ギリギリのところで、無事に刈り取り作業が終わり、歓声を上げる佃製作所一同のシーンと、なぜか、「イ草刈り取り」を行っている、熊本の農家の方の姿がダブってしまいました。日本農業の明るい将来を祈っています。

“需要”があるところに“供給”が成り立ちます。「そんな単純なもんじゃないよ!」とのご指摘を承知で申しあげます。「農業の将来が明るければ、過疎化に歯止めがかかり、地方再生への道に明かりがともるのではないか」と願っています。そういえば「畳み掛ける」という言葉があります。「余裕を与えず立て続けにする」という意味です。「畳利用にご協力を!」。<熊本県畳工業組合>の代弁者として“余裕を与えずに”お願いいたします。

「タタミ」に興味・関心を持って、洋風のご自宅に「和室」を設けておいでの「ガイジン」の方が、かなりおいでだと聞いています。時代や生活様式が変化する中にあって、日本人として「タタミ」への想いを、この際思い返してみたいと思っています。

最後に、古い諺をそっとつぶやきます。「畳と女房は、新しい方が良い」。反撃があるといけませんので<フランスの諺>でフォローします。「ワインと女房は古い方が良い」。そのようなことを思いつつ、イ草香る新しい畳に座って、古いワインを飲みました。「新しいも古いも・・・どちらも良い」。しかし、本心を吐露しますと、“新しい畳“と“古いワイン”の方に軍配です!

著者プロフィール

小泉武衡

職歴
 元 寺田倉庫株式会社 取締役


1964年より「物流業」に携わり、変化する“各時代の物流”を体得するとともに、新たな取り組みとして「トランクルーム」や「トータル・リファー・システム(品質優先ワイン取扱い)」事業に力を入れてきました。さらに、営業・企画・渉外・広報棟ほか、倉庫スペースを利用した「イベント事業責任者」などを歴任し、旧施設の新たな活用、地域開発、水辺周辺の活性化に尽力してまいりました。

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