新型肺炎 不可抗力による輸送キャンセル懸念 港湾人員不足で遅延発生
Daily Cargo 2020年2月7日掲載
新型コロナウイルスの感染拡大による中国発着の荷動きと船舶運航への影響が懸念されている。複数の情報源によると、すでに中国積み・揚げ貨物の両方で、荷役要員不足などによるスケジュールの遅延や航海のキャンセルが発生しているもようだ。中国国際貿易促進委員会(CCPIT)は1月30日に新型コロナウイルスの影響による国際貿易契約の不履行に対して不可抗力(フォースマジュール)証明書を発行すると発表。海運関係者は不可抗力宣言による輸送キャンセルが今後、頻発することを懸念しており、すでに中国向け貨物を積んで向かっている場合には難しい対応を迫られることになる。
ドライバルクでは、中国向けの大豆などで荷役の遅延が発生しているもようだ。海外紙によると、舟山を長江デルタ地域の港湾で、人員不足による大豆の荷揚げの遅延が発生しているという。また、中国積みの鋼材や中国向けの木材などでは、人員不足や物流網のまひなどによる輸送のキャンセルがすでに発生しているもようだ。
日本から中国に鋼材を輸送する近海船の関係者によると、今のところ日本出し中国向け鋼材輸送のスケジュールにも影響は出ていないという。「もともと旧正月連休で貨物のブッキングが減っていたこともあり、影響が顕在化するのはもう少し時間が経ってからだろう」との見方を示しつつ、「製造業の活動が停滞し鋼材需要が鈍化することで、荷動きの減少につながらないか心配している」と語った。別の近海船関係者は「中国国内の自動車などの工場のラインが止まれば、鋼材の倉庫と置き場のスペースが逼迫することが懸念されている」と述べた。
コンテナ船サービスでも影響が広がっている。船社関係者が頭を悩ませているのは、中国各港におけるリーファーコンテナの取り扱いだ。既に各コンテナターミナルのリーファープラグが満杯状態になっており、これ以上の荷降ろしが困難な状況になっている。一方、通常のドライ貨物については中国各港での荷役は継続中。海外港における検疫強化でスケジュールに影響がおよぶケースはあるものの、輸送全体に大きな影響が生じる事態にまでは至っていない。
また、交通規制やトラック不足を受け、中国港においてデマレージとディテンションを一定期間免除する動きも出てきている。春節に合わせ、主要アライアンスはもともと大規模な欠便を計画していたが、春節延長に合わせてさらに追加の欠便を需要動向に合わせて実施していく考え。これまでに2Mが欠便の追加を公表している。
ケミカル船では、市場関係者によると、一部で荷役に遅延が生じつつあるが、現時点ではまだ深刻な事態には発展していないようだ。一方で今後、影響拡大を懸念する声は多い。旧正月の延長が輸送需要に大きく影響してきそうだ。中国国内の工場の稼働停止や物流の停滞で在庫が膨らんで陸上タンクが満杯となり、「荷揚げが不可能となる自体が想定される」(海運関係者)。今後、荷動きが停滞する恐れがありそうだ。
中国向けの輸送需要鈍化はケミカル船市況を下押しする要因となる。今年のケミカル船市況はプロダクト船のケミカル市場からの退出や環境規制強化に伴う高齢船の撤退など、船腹供給面で複数のプラス要素が見込まれている。一方で輸送需要の伸びについては警戒感を示す市場関係者が多く、新型コロナウイルスの流行によりそれが現実のものとなる可能性が出てきている。市況回復の遅れが懸念される。
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