朱に交わらない立場
2020年2月12日
「愛と繁栄を実現する経営改革」
臨済宗妙心寺派正眼寺の山川宗玄老師は、若い頃を振り返ってこう話されていました。ご自分の師匠が毎回同じ話をされるので、いつも話の途中で居眠りをしていたそうです。後になってから、信者のある社長さんと話す機会があったときに、ついつい「師匠の話は毎回同じでしたね。」と口を滑らせたそうです。
これに対してその社長さんは、「そうでしたね」と一旦は受け入れはしたものの、続けて「でも毎回違いましたね」と仰ったそうです。聞いた瞬間は意味が分からなかったそうですが、分かった途端に「ゾクッ」として大いに反省させられたそうです。「聞くご本人が毎回変わっていた」ことに気づいたからです。
この社長さんのような人格者は滅多にいません。実際には、「変われない人」がほとんどです。毎回同じパターンの会議をする会社やら、同じ失敗を何度も繰り返す人やら。自分がいつまでも”朱い”ままなのに、自分では”いつまでも朱のままではない”と思い込んでいる人です。偉そうなことを言うこの私もそのとおりで、この社長さんの”ツメのアカ”でも煎じていただきたいところです。
自分が変われないだけでなく、ミイラ取りに来た人をミイラにしてしまうケースもよく見られます。“会社を変えよう”と意気込んで入ってきた人を、逆に既存体質に染めてしまうのです。追い返そうとの悪意があってではなく、彼が「深入り」したために自ずと既存体質に染まってしまうのです。
とはいえ、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の言葉どおり、「深入り」しないと相手から信頼されないだけに難しいところです。それでいて、彼を染めてしまった側も、その事実に気づいていません。
気づかせてくれる人、「朱に交わらない立場の人材」が身近にいるといいですね。上述したような”名社長”は望むべくもありませんが、単に「客観的に見ることができて、指摘してくれる」人が。