来る年、そしてその先も、物流のプロとして生きる
2019年12月11日
物流よろず相談所
あとひと月あまりで幕を閉じる令和元年―、振り返れば次から次に抱えきれぬ程の思い出が膨らんで参ります。ここまでくれば、せめて残る月日を無事にやり遂げることに力を注ぎたいと考えるのが妥当でしょう。
しかし一方で来る年に向けた戦略と、そのためのストレッチにも着手し始めねばなりません。年末の戦闘現場は頼もしいスタッフに委ね、経営者及び幹部の皆様は、2020年のスタートダッシュに業務をシフトする、というのが理想であります。国内外の景気の先行きが未だ不透明な中、決して楽観が許されない年、会社の生き残りを意識すれば当然塾考を重ねた判断が必要となってきます。
経営者として何を選ぶべきか、思いを巡らして止まぬ皆様に少しの道しるべとしていただきたいのが、ジェームス・C・コリンズの理論です。「ビジョナリーカンパニー」という本の中で企業の活性化と衰退を解説したコリンズは“成功する会社や幸せな家庭は似ているが、不幸な家庭はそれぞれが違っているものだ。同様に衰退していく企業もそれぞれ違ったパターンをもっている”と述べました。また“成功している間の会社は、経営者が少々間違った決断を下しても勢いのお陰で何とかなるもの。しかしそれがトップの傲慢を生み、衰退の第一段階が始まる”、ともしています。これはあくまで衰退に注目した理論でありますが、勢いがあれば確かに大胆なかけも必ず成功すると思えてしまうのでしょう。
しかし物流を生業とする以上は、やはり根底を流れる“安全”と“人を脈の中心に据えた基盤”だけは絶対に崩すべからず、です。特別なケースを除いては、主要事業を簡単に放棄したり、作り変えたりせず、まず今あるものを確実にこなし、より精度を上げてその分野の差別化を図る方が確実です。強堅な基礎を支える“人材”と“資金”それに“安全とコンプライアンス”が揺るがぬものになった時点で周りの社会を見渡し、あるべき姿を決めれば良いと思います。
企業の繁栄と衰退は間違いなく経営者次第。その重責を担う以上、いかなる時も苦悩から逃れる訳にはまりません。物流業という仕事に精通しつつ、一方で“経営”と“経済”に関しても少なくとも社内ではトップの知識を持たねばならないでしょう。先に述べたコリンズは、会社の成功を“株価の上昇ではなく、株の価値が上がること”と言っています。短期間で上下するような株価で会社の価値は計れません。長期にわたり安定した収益を保つことこそ真の成功であり、成長を支える人材が充実している結果だと言うのです。著名な経済学者も結局は“人”の大切さを語るのだと思いました。
“真剣に仕事と向き合う”社員がどれ程いるかで会社の未来は明るくも暗くもなります。現場に良い意味での緊張感が漂うために、経営者は絶え間なく策を講じなければなりません。以前にも取り上げたハマキョウレックスの“日々決算”も幹部やスタッフのモチベーションを否が応でも引上げる力を持つものでしょう。創始者の大須賀正孝氏自らが講師をつとめ、月に1度合宿形式で行われる“大須賀塾”で全社員は“真剣勝負”の洗礼を受けると言います。
“現状維持”を望んだ結果は、更なる降下でしかありません。やはり今のその上を目指さねば成長はない、と実感する例が周りにはまだいくつもあるものです。そのためにもまず会社の実情を的確に把握し、必要な人材とコストをしっかり割り出した後に、足りないもの(人材や知識を含む)を補充することが重要でしょう。背中に偽りの羽を付けて飛ぶより、自らの足で一歩を踏み出す方が確実ということですね。