プラットフォーマーを支えるCCC
2019年6月12日
「愛と繁栄を実現する経営改革」
~Amazonのビジネスモデルと経営理念に学ぶ~
ノーマルなケースでは、「売上が急増するとキャッシュはかえって減少する」。ノーマルとは”後金制”だ、すなわち仕入代金の支払が先でその後に売上代金が入金される。そして、入金になったときに利益の分だけキャッシュが増えるのだが、売上急増期にはその前に次々と支払が発生してキャッシュが追いつかないからだ。
では、ノーマルなケースと逆の”前金制”を採ったらどうなるか?そのときには、結論が逆になり「売上急増期になるとキャッシュも急増する」。例えばセコムは創業時から”前金制”を採用したおかげで、資金繰りに困らなかった。つまるところ、支払と入金のどちらが先かにかかっている。
では、支払と入金が1日ズレると、経営にとっていくらの影響があるか?結論から言うと、影響額=1日あたり売上高×CCCだ。ここでCCCとは、支払から入金までのズレの日数をいう、正式にはCash Convergence Cycleだ。ノーマルな後金制ならプラスになり、セコムのような前金制ならマイナスになる。
例えば、年間売上高365億円(=1日あたり売上高が1億円)でCCCがプラス10日なら、影響額はプラス10」億円だ。これは、当初に「10億円の”運転資金”が必要」を意味する。
逆にCCCがマイナス10日なら、当初から「10億円の”余剰資金”がある」ことになる。ちなみにこの情報は最もポピュラーな財務諸表である”損益計算書”を見ても分からない。
前者なら10億円の借入れなどが必要になる一方で後者なら同額を貸付できることを考えれば、経営に対する影響度の大きさがお分かりいただけるだろう。
*自社の場合はタイムラグ日数を把握できるので問題ないが、
他社のように把握が困難な場合は、財務諸表分析によることになる。その際は次の式を使う。
CCC=(売上債権回転期間)+(棚卸資産回転期間)-(仕入債務回転期間) |
Amazonの2017年のCCCは、”Four Weeks MBA”のHPによるとマイナス26.92日だ。同年の年間連結売上高が1,779億ドルだから、計算すると131億ドル(=1,779億ドル×26.92日÷365日)の資金余裕があることになる。円換算すると約1.5兆円(同年末日レート)だ。これだけあればいくらでも新規事業への設備投資に回すことができる。
じっさい、営業利益率はずっと1桁と急成長企業にとっては極端に低いにもかかわらず、2018年連結売上高は2328億USドルと、前期比31%増もの2桁成長を続けている。
その秘訣はこのキャッシュフロー経営にもあるのだ。この”前金制”のキャッシュフロー経営を成り立たせているのが、”プラットフォームのビジネスモデル”だ。プラットフォーマーとは、「求められる人と求める人」とを仲介する事業体だ。
Amazonは「商品を売りたい人と買いたい人」とを仲介するプラットフォーム事業も手掛けている。注目すべきは、プラットフォーマーのビジネスモデルが、出店手数料等などで“前金制”を採用しやすいモデルな点だ。
しかし、CCCやプラットフォーマーは単なる手段に過ぎない。最もAmazonに学ぶべきは経営理念であろう。「世界中で最もお客様を大切にする会社であること」「顧客は常に正しい」との経営理念。そして、「世界中で最も安く早く良いものをお客様にご提供」すべく、真の”顧客第一”を実践してきた点だ。
私も、実際にAmazonを使ってみてこれを実感している。例えば、Amazonは”椅子”を買うと次には”机”を勧めてくる。これは顧客の立場からすれば当たり前だが、他社は再び”椅子”を勧めてくる。こうした”顧客第一”が随所に見受けられる。自社の利益よりもお客様の利益を優先している。
“私利私欲”を追求する人は他人を恐れるが、それを捨てて”世のため人のため”を追求すると他人が怖くなくなる。むしろ、相手の方がその人を恐れるようになる。こうした理念を抱いて、こつこつと実践することは、わが国企業でも決して不可能ではない。
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