徒然日記

狙われる「日本産ブランド」

2019年6月5日

『徒然日記』 

 

ご記憶にあると思いますが、3月9日の新聞にこんな記事が出ていました。【輸出が認められていない和牛の受精卵や精子が中国に一時持ち出された事件で、大阪府警生活環境課は9日、飲食店経営の○○容疑者(51)=大阪府藤井寺市林1=ら2人を家畜伝染病予防法違反などの疑いで逮捕した。家畜伝染病予防法は動物やその肉、卵などを輸出する場合に検疫所で検査を受けることを義務付けている。和牛の受精卵や精子は検疫を受けても輸出は認められない】(日本経済新聞)

日本の食べ物は、いまや世界から注目を集めていますが、その代表的なものが「日本食」です。「和菓子」と並んで、見た目の美しさが注目されているのが「和食」ですが、そこから思い浮かぶ食材に「和牛」があり、“和食ブーム”を背景に、日本産牛肉の輸出が拡大しています。2017年の輸出額は前年を4割上回る192億円。18年には200億円を超えたようで、10年前の5倍に膨らんでいます。

その和牛ですが、どこかにこのような“定義”が書いてありました。【和牛は明治以降、日本に昔からいる従来種の牛に外来種を交配し、品種改良を重ねてきた4種類の肉専用種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)のことを言う。黒毛和種が約95%を占め、一般的には和牛と言えばこれを指す。肉質は軟らかく、最高級の牛肉は筋肉の中に脂肪が入った「霜降り」(サシ、脂肪交雑)で有名だ。「神戸牛」、「松阪牛」、「近江牛」といった産地を冠した銘柄牛はすべてこの系統に入る。】だそうです。

その一方で、最近では、世界的に外国産<WAGYU>が多く出回り、日本の和牛の脅威となっており、「日本産和牛」のブランド力を維持する対策が求められています。現在ではオーストラリアの他、アメリカ、カナダ、中国などでもWAGYUの生産が進んでいるということで、昨今の日本食ブームにより、赤身肉を好んでいた欧米などでもサシが入った和牛の人気が上昇中だそうです。その影響で、冒頭のような事件が起きたのですが、「遺伝資源はブランドの命であり、流出防止は重要課題だ!」と、日本の和牛を守るため、農林水産省などは対策もはじめていますが、【和牛などの家畜の輸出は、相手国との取り決めで制限をかけているものの、受精卵などの輸出を直接禁止する法律がない。】ということです。

それでは・・・、ということで、同省は平成18~19年に、家畜の遺伝資源保護に関する検討会を実施しましたが、「法規制は困難」と諦めて?しまいました。その訳はというと、「植物と違い、動物は受精卵の段階ではその後どのように育つかが不透明で、知的財産とみなすのが難しいため」だそうです。そこで、遅ればせながら【和牛の遺伝資源に関する有識者らによる検討会】を再度発足させ、「受精卵などを採取・保管する全国の施設(役600カ所)の保管状態を調査。和牛の遺伝資源の流通管理の適正化のため、できる限りのことをしていきたい」としていますが、『牛に引かれて、農水省参り』の御利益を期待したいところです。その第一歩というのでしょうか「日本の和牛だけに付けることができるマークを作成。日本国内で生まれ育ち血統が証明された本物の和牛であることを証明」しているそうですが、頑張ってほしい思いです。水戸黄門様並みに、「この『ニッポンブランド・マーク』が目に入らんか!」と、見得を切るなどは。 

ということに思いを馳せていたときに、思い出しました。みなさんもしっかりとご記憶だと思いますが、昨年の平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子「LS北見」のメンバーが試合中の休息時間「もぐもぐタイム」で食べて注目された“韓国のイチゴ”です。直後の閣議後の会見で、当時の斎藤健農林水産相が「以前に日本から流出した品種を基に、韓国で交配されたものが主だ」と指摘しました。その上で、日本の品種保護を強化していく方針を示しました。さらに斎藤大臣は、「海外でも知的財産権を取得し、仮に流出が発見された場合は、栽培や販売の差し止め請求などを行うことが重要だ」と強調。海外での知的財産権の取得を支援するため、「今年度の補正予算や、新年度の予算案で対策費を計上している」と説明しました。そして結びのコメントではしっかりと、「日本の農林水産大臣としては、カーリング女子の選手には、日本のおいしいイチゴをぜひ食べていただきたい」と、舌ストーンを投じていました。

農水省の調査によると、韓国のイチゴ栽培面積の9割以上が日本の品種を基にしたものといわれています。これまで「とちおとめ」「レッドパール」「章姫」といった日本を代表するブランドイチゴが無断で持ち出され、韓国で勝手に交配されて「雪香(ソルヒャン)」「梅香(メヒャン)」「錦香(クムヒャン)」というブランドが作られ販売されているそうです。韓国はイチゴの輸出ですでに日本の上をいっており、海外輸出量は日本の5.7倍以上(16年度実績)。それによる損失額は5年間で約220億円にのぼると、農水省が試算しているそうです(注:韓国が他国へ輸出したイチゴをすべて日本産に置き換えて試算した場合の金額)。

さらに恐ろしいことに、「次は『名古屋コーチン』が狙われている!」そうです。それから、カリフォルニア米で作った「日本酒」の評判が良いそうです。

「かようしかじかの“これら盗人”(ですよね!)」に、どう対処すべきでしょうか。「イチゴ・イイチエ」などと洒落ている場合じゃありません!

著者プロフィール

小泉武衡

職歴
 元 寺田倉庫株式会社 取締役


1964年より「物流業」に携わり、変化する“各時代の物流”を体得するとともに、新たな取り組みとして「トランクルーム」や「トータル・リファー・システム(品質優先ワイン取扱い)」事業に力を入れてきました。さらに、営業・企画・渉外・広報棟ほか、倉庫スペースを利用した「イベント事業責任者」などを歴任し、旧施設の新たな活用、地域開発、水辺周辺の活性化に尽力してまいりました。

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