真の強い営業とは
2019年4月24日
物流よろず相談所
物流業における提案営業の重要性を2月13日のコラムでご説明させていただきました。今回は真の意味での営業強化をどうすすめるべきかについて説明させていただきます。
物流業だけに限られている訳ではありませんが、営業活動が年々難しくなっている現在、セールス・マネジメントのレベルを上げるだけでは真の営業力強化にはなりません。営業戦略のレベルアップから取り組まなければ競争には勝てない時代になっています。営業のレベルアップと言えば営業手法や技術はもちろん大事なことですが、しかしまず、自社の強みと弱みを知ることが何よりも先に必要となります。営業活動を展開する上で、自社の強みと弱みを認識しておかなければならないことはあらためて説明の必要がないと思いますが、その方法については若干の錯覚や誤解があるようです。
一般に強み弱み分析というと、何でもかんでも強みと弱みをリストアップしなさい、というものが多いようです。しかし、強み弱みは事業にとって重要性の高い項目との関連でとらえられなければ実用的ではありません(この「事業にとって重要性の高い項目」のことを戦略用語でKFSといいます)。KFSは「キー・ファクター・フォー・サクセス」の頭文字をとった略語で、文字通り、「事業を成功させる鍵」という意味です。
事業にとって重要性の高い項目とかけはなれた分野でいくら強くても、競争に勝つことはできないからです。反対に重要度の低い項目で弱くても大した問題ではありません。放っておけばよいのです。企業の経営資源は限られているわけですから、重要度の低い弱みまで何とかしようとして資源を分散するようではかえって競争力の低下を招きます。 戦略では重点思考が1つポイントです。また、強み弱みの程度はライバルとの比較で考えることが必要です。抽象的に漠然と、強い弱いと判断したり、あるいは、自らが理想と考える水準と比較して強い弱いと判断するのはよくありません。事業は競争ですから、相手に勝つことが前提です。
ある項目が自社の強みであると抽象的に考えても、当面のライバルの方がその点で優れていれば、これは強みにはなりません。逆に、弱みであると思っても、当面のライバルよりも優れているのであれば、それはそんなに気にすることはありません。他の弱みを補強するか、重要な強みをさらに強化することを優先させるべきでしょう。
強みは比較すべき相手との相対的関係ですから、直接競合するライバルよりも強ければよいと考えるのが原則です。しかし、いくらライバルより強ければといってもクリアしなければならない最低水準は存在します。前者をクリアすべき相対水準と呼べば、後者はクリアすべき絶対水準ということができます。そして、このクリアすべき絶対水準を「閾値」(イキチあるいはシキイチ)と呼びます。この閾値の考え方は営業戦略や営業活動でも役立つことが多いのです。
たとえば、会社が何年にもわたって投資を続け、総投資額としては相当の金額になったにも関わらず、初期投資が閾値を超えていなかったために、結局、追加投資が実を結ばなかったという新規事業は枚挙にいとまがありません。これらの中には、十分な初期投資をしておけば、もっと少ない総投資額で成果をあげることができたものも少なくないはずです。ここで、強者、弱者の考え方を説明してみたいと思います。営業戦略を展開する上で、戦略の定石を知っておくことが重要である。定石とは、「ある特定の条件下においてうまくいく可能性の高い打ち手」を意味しますが、諸分析結果から戦略を導く場合に、戦略定石を知っているか知らないかの違いは大きいものです。