物流業として見直す
2019年3月27日
物流よろず相談所
加速する人口減少が、そのまま働き手の不足を生み出す悪循環は一向に終了の気配を見せていません。とりわけ物流業を始めとする多くの労働集約産業は深刻な人材不足を課題の柱に、省力化対策の道をひたすら歩み続けているようです。運送業においては史上最悪ともいえるドライバーの不足事態が年々進み続けており、輸送力の確保もますます困難になって参りました。日本経済の発展になくてはならない“物の流れ”が滞る事が何を意味するのか、事態を深刻視できる人々が一人でも多く存在してくれることを望む一方で、家族や会社を守るための知恵も枯らしてはならないはずでしょう。
大手製造業を中心とした景気回復気運や、CVSなどにおける売上増などに景気の回復を重ね合わせる楽観視は、もはや少数派でありましょう。トラック業者の倒産は前年を上回り、そのほとんどが、燃料高騰を始めとするコスト増や人材不足、後継者問題などに押しつぶされた末の結果でした。2019年を乗り切るためには、輸送価格に燃料費や本年10月消費税増税分の上乗せを確実に行えるかどうかが、運送会社にとってひとつのカギであるとも言えそうです。他業種においても、経営戦略として効率化を始めとするコストの削減をさらに進めていくべきであることは言うまでもありません。当然人材確保における取り組みも、緊張感を持って続けたい企業の重要な仕事です。経営の柱でもある人材は先に述べた通り当分は大幅な不足が続くと思われます。長期戦に耐えうる企業体力を温存しつつオンリーワンの付加価値だけは絶やさぬよう、工夫をこらしていきたいものであります。真の景気回復は地方を始めとする中堅都市の景気けん引にもかかっている、と言っても過言ではないでしょう。
企業として成功し、存続して行くためには他と同等の投資でも、より多くの利益を上げることが必要でしょう。物流業において他社に勝ち、収益を確保し続けるための絶対条件は、まず第一に“事故がないこと”です。しかし、残念なことに多くの事業者が年に数回以上の事故を起こし、それにより少なからず損害を被っています。事故の種類は様々ですが原因の多くが防ごうと思えば回避できたものであることは言うまでもありません。いずれにせよひとたび事故が起きるとその処理には相応の費用と時間を費やすことになります。仕方のない事、とはいえまさに貴重な企業利益の浪費であることに相違ないでしょう。存続の障壁であるこれらの事故すなわちムダの排除こそ、企業成長条件のひとつなのです。
かつて“安く運べば、仕事が来た”トラック運送業の時代はもはや遠い過去の昔話です。現代においても、他社の後を追いかけ、工夫や開発などとは無縁の経営を続けていると、程なく破綻が訪れることでありましょう。物流業において、今や“安全・安心”は言うまでもなく当然の条件。これはどんな業界でも通用することです。無事故で顧客の心をつかんだ後はプラスの付加価値に自社独自の工夫を重ね提供し、お互いの利益を確保し合うことです。この双方Win & Winの関係こそ、企業と顧客の末永い良好な関係を築く上での必須条件。どちらかが上になることは決して良い結果につながらぬ、と覚えておきましょう。
顧客満足を得るために重要なことは、他にも多くありますが、時折基本に立ちかえり、社内整備・改善を繰り返すことも大切です。現場を重視する電装品業界としても、日々5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の実践具合等を検証し、時間を区切って話し合いや研修の機会を設けることが重要であると思われます。良いものを見分ける目を持つ顧客がとても多い現代。彼らは現場を見てその会社を判断するとも言われています。いつ、誰に見られても恥ずかしくない、正しい現場のあり方をもう一度考えてみる必要はありそうです。
現場の改善を行ない、スタッフとコミュニケーションを取る中で、顧客の望むものや新サービスのヒントなども拾えるかも知れません。日々の業務の中で、報・連・相を実践しておくことで、改善や5Sもスムーズに運ぶことでしょう。強固な土台が築いてあれば、少々思い切ったチャレンジも叶えることができるはず。企業理念の原点に時折立ちかえり、顧客に提供し、提供される物が何であるか考えることを忘れないでいただきたいものです。